『文豪ストレイドッグス』(文スト)の感想|文豪が放つ「言葉」の魔力。横浜を舞台に描かれる、不完全な大人たちの美学とは?
なぜ『文豪ストレイドッグス』はここまでおしゃれで苦しい物語なのか?
横浜という近代の入り口を舞台に、理想と現実のはざまで揺れる文豪たち。
本作は単なる異能力バトルではなく、近代の精神をまとった人たちの物語です。
横浜×近代文学という視点から、『文豪ストレイドッグス』の魅力を読み解きます。
『文豪ストレイドッグス』あらすじ&作品情報
孤児院で冷遇されて育ち、追い出された少年中島敦(なかじまあつし)は、川を流れてくる太宰治に出会う。武装探偵社の社員である太宰治・国木田独歩は異能を使う胃能力者であり、人食い虎を追っていた。虎を見たことのある中島敦は、2人の捜査に協力することになる。
原作:朝霧カフカ、作画:春河35
連載誌:ヤングエース(KADOKAWA)
ジャンル:バトルアクション
連載時期:2013年1月号~現在(連載中)
『文豪ストレイドッグス』の魅力|理想と現実との距離感に悩む大人たちの葛藤
横浜×文豪、実は相性がいい
一番の魅力は雰囲気、おしゃれさだと思います。
ところどころで出てくる原稿用紙の表現、
異能名はそれぞれ作者の作品モチーフ。
一度見たら忘れないおしゃれなキャラデザ。
メインの中島敦、太宰治はかなりのイケメン
シーンごとの背景や構図は美しく、絵画のようです。
そして舞台は現代の横浜。あえておしゃれに全振りしている設計に見えますね。
おしゃれな街を背景に現れる文豪とマフィア。
治安悪めな雰囲気も含め、かけ合わせが完璧です。
そして異国情緒があり、明治開港の場所であるということは、
横浜は近代が始まった場所です。そして文豪たちは近代文学の作家たちです。
近代文学…個人の内面や、理想と現実の葛藤を描く。個人の苦悩が中心の文学。
どちらも近代という揺らぎを象徴しています。
映画的演出
俯瞰でのショットが多く、誌的な表現が多いです。
BGMの入り方、横浜の夜景、逆光のシルエット、ポートマフィアのステンドグラス
映画のような作り方をしており、美しい映像が続きます。
太宰のコートとかも雰囲気あってかっこいいよね
魅力的なキャラクター
中島敦は、自己否定が強く芥川にも自己憐憫について指摘されますが、武装探偵社入社後成長していきます。
国木田独歩は、理想に縛られますが、人助けの精神とリーダーシップがあります。
太宰治は理想と現実どちらも見抜いたうえで、生への執着がなくなり虚無を抱えて生きています。
どのキャラクターも理想と現実との距離感、人生における付き合い方に悩んでいます。
理想と現実どちらも見抜くと生への執着がなくなるのがなんだかすごく文豪だね
これがおそらく『文豪ストレイドッグス』の根底にあるテーマであり、
同時に近代文学における大きなテーマになっています。
『文豪ストレイドッグス』の名言
「私は自分のした事に就いて後悔したことはなかった」(中島敦)
昔、私は自分のした事に就いて後悔したことはなかった。しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた。(中島敦)
M1グランプリ2連覇を成し遂げた令和ロマンの漫才にもこんな言葉がありました。
「やらない後悔より、やって大成功」
いつの時代も人は後悔することが本当に苦しい感情の一つなのかもしれません。
基本的に後ろ向き、自分にはできないと引っ込み思案の中島敦が、
武装探偵社に入ってかなり前向きになり成長したことが感じられる言葉です。
そしてこちらは実際の文豪・中島敦のエッセイ『光と風と夢』からの引用です。
文豪ストレイドッグスはこのような名作の引用、おしゃれなセリフが魅力の大きな一つです。作者のセンスが大爆発で恐れ入ります。
このセリフの引用のためにこのエピソードがあった…ってコト!?
「いつか君にも蒼王の炎が宿るだろう」(太宰治)
国木田君。君がそのまま理想を求め、理想を阻むもの達を排除し続ける限り、いつか君にも蒼王の炎が宿るだろう。(太宰治)
一番好きなシーン
蒼王は法で裁けない犯罪者を自ら裁いていました。
悪人を正当に裁く、まさに理想であり正しいことです。
ですが彼の最期は警察を巻き込んだ自爆。罪のない人を巻き込む形となってしまいました。
理想だけを追い求めることの弊害。
国木田を信頼しているからこその太宰の言葉。言葉選び。
理想について考えさせられる名シーンだと思います。
『DEATH NOTE』でもこれに似たテーマが取り上げられていますね。
『文豪ストレイドッグス』の見どころ
- 横浜×文豪のおしゃれさ
- 実際の作品のオマージュや引用
- 理想と現実との距離感への葛藤


